2011年11月1日のエントリで、私は「標的型攻撃」の英訳を「Targeted Intrusion」もしくは「Targeted Attack」であると書いた。残念ながらこれら私が紹介した英熟語は、間違いではないものの、あまり一般的には使われておらず、昨今のサイバー攻撃のことは「Advanced Persistent Threat」 (通称APT)と呼ばれることのほうがより一般的らしい。ここで謹んで追加・修正させていただくとともに、この種の「新技術用語の正しい英訳」に関して、いつも私が苦労していると言う話を一席と言うのが今日のエントリの主題。

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シトリックスのような外資系のソフトウェアメーカに勤務していると、どうしても英語でのコミュニケーションを取らざるをえないことがある。英語のコミュニケーション自体が苦労の連続なのだが、特定の技術用語、特に新しくできた技術用語を「正しく英訳」することは、その中でも難易度の高いものである。

次から次へと生まれる新語でも、「和訳」の場合はそれほど難しくない。なぜなら、新語の和訳には「正解」はないので、まあ間違った意味に取られない程度の日本語にしておけば合格点なのだ。特にIT業界における新語は、オリジナルの英語こそが絶対基準であり、そこから大きく離れなければ、カタカナになろうが不自然な日本語になろうが、大きく困ることはない。極端な話、日本語を読んで「?」と思えば、オリジナルの英文を読めば良い。不自然な日本語よりも、英文のほうが分かりやすかったりすることも珍しいことではない。


一番困るのは、オリジナルの英語から訳された「日本語訳」しか分からない場合に、そのオリジナルの英語を突きとめることだ。これは本当に難しい。曖昧さが許される和訳と違って、絶対的な正解が存在するので、意味としては合っていてもオリジナルと異なれば、それは不正解なのである。

「正しいオリジナル英語」を見つけるために、私がこれまで使っていた手口は、英文を和訳したドキュメントから逆翻訳すること。例えば、当初「標的型攻撃」の英訳を「Targeted Attack」としていたのは決して直訳したわけではなく、下記を参照していたことによる。



まず下の抄訳記事を、Googleで「標的型攻撃 抄訳」と検索して見つけ、その中の原文リンクから、オリジナル英文を探し出した。この種の和訳記事の場合、英文がオリジナルなので、英語としての正しさは安心できると言ってよい。(和文が不自然なことは往々にしてあるが)

なので、「Targeted Attack」も間違いではなく、このような用語も確実に存在はしている。日本語の「標的型攻撃」も、おそらく誰かが「Targeted Attack」を和訳したものなのだろう。しかしながら、冒頭に書いたように「Advanced Persistent Attack」のほうが一般的なようであるし、少なくともGoogleでは"Advanced Persistent Attack"で検索したほうが、より深い情報が得られることは事実だ。