前回のエントリでは、レジ無し店舗の「Amazon Go」が、一歩先行して開発が進められていた国産無人レジとは完全に別モノで、一気に普及が進むと予想する理由を書きました。今回のエントリでは、その普及がどのような影響を及ぼすかを考えてみたいと思います。
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・Amazonが本気になれば普及は瞬時
普及した場合の影響を考える前に、具体的にどれくらいのスピードで普及するかを考えてみたいと思います。私が予測する普及の最速シナリオは下記の通りです。
2018年:日本を含めた各国への1号店の進出
2019年:世界の主要都市で利用可能に
2020年:主要都市の人の多い場所では普通に利用可能になり、珍しい存在でなくなる
2021年:Amazonが画像認識技術を他社にライセンス提供
2023年:日本では半分以上のスーパーやコンビニが画像認識技術を使ったレジ無し店舗に
2025年:有人レジを持つスーパーやコンビニは化石的な存在になる

「Amazonがどこまで本気になるか?」次第で、ずっと遅くなる可能性もありますが、少なくとも普及を阻害する他の要因は既に無くなっていると言って良いかと思います。1号店の様子を見ると、技術面の課題はほぼ払しょくされているようですし、この種の新技術普及の一番の阻害要因であるコスト面の課題も、前回のエントリで書いた通り極めて少ないです。むしろ、Amazonとしては初期開発コストを回収するために、普及を早めるモチベーションは高いはずです。

上述したシナリオのうち、唯一現時点で強く断言出来ないのが「他社へのライセンス提供」でしょうか。後述する理由で、ライセンス提供したほうがAmazonが得られる利益は大きいと考えるのですが、絶対そうだと断言も出来ず、ライセンス提供しない可能性も大いにあるでしょう。この場合は、当然普及の速度は弱まります。


・他社へのライセンス提供の可能性
Amazonが、Amazon Goの画像認識によるレジ無し店舗の技術を他社にもライセンス提供するだろうと私が予想する理由を述べます。

「小売り」は、国ごとの文化や法規制が大きく異なります。そのため、ある国で成功したスーパーやコンビニの会社が、別の国で同じやり方をして失敗することがしばしばあります。特に日本では、フランスのカルフールの失敗に代表される通り外資の総合小売業が成功した例は(コストコなど一部を除いて)非常に少ないのが現状です。これは日本だけでなく、国には国ごとの文化や規制もあるはずで、一般論から言うと、「その国での商売は、その国の人に任せるのが良い」のです(もちろん例外はありますが)。

そのように考えると、普及のためにその国特有の小売りに適合させることをAmazon 1社で頑張るよりは、元からある小売り業にある程度任せて、あの素晴らし画像認識技術の提供だけに絞るのが効率的なはずです。そのほうが、より普及の速度は増し、Amazonが得る利益も大きいと考えるのです。

また、あの仕組みは、独立したシステムとしての提供ではなく、クラウド提供になるでしょうから、他社の購買記録をもAmazonが把握できることもAmazonにとっては大きな魅力です。ただし、これは逆に、ライセンス提供を受ける他社からすると、自社の貴重な情報をAmazonに吸い上げられてしまうわけで、提供を受けることを躊躇する大きな理由にもなるでしょう。しかしながら、他社からすると同様の仕組みを自社開発するのはあまりにも難しく、背に腹は代えられず導入してしまう可能性が高いと考えるのです。

・あらゆる購買行動をAmazonに監視される世界
元々、Amazonのオンライン店舗の特長は、客の購買行動をビッグデータとして分析し、誰がどのような商品を次に購入しそうかを予測して、販売戦略に役立てることにありました。これは、ユーザーの立場で「あなたへのおすすめ」が表示されることで見て取れますし、仕入れや在庫の最適化と言ったプロセス改善にも大いに役立てています。

これまでこのような購買行動のビッグデータ化は、Webオンライン店舗に限定されていましたが、Amazon Goが普及すれば、物理店舗での購買行動までAmazonに監視され、分析されることになります。私たちがどの場所の店舗で、何を購入したか、Amazonは全てお見通しになるのです。

このことを懸念する人たちは多いでしょう。私もそのような懸念がゼロだと言い張るつもりはありません。しかしながら、便利になる要素も満載のはずです。例えば、これまでは遠くの店舗に買い物に行かざるをえなかった特に好きなものが、私の購買行動を分析して近くの店舗に取り揃えておいてくれるようになるでしょう。また、欲しいと思ったときに品切れになっていないように、近くの店舗でしっかり在庫は確保しておいてくれるはずです。私が欲しがりそうな新製品が出たら、真っ先にそれを私に教えてくれることも有難いことです。

これを、「気持ち悪い」と感じるか、「便利だ」と感じるかは、人それぞれでしょう。ただ、いくら監視されることについての懸念があっても、そこから逃げることは極めて難しいはずです。もちろん実際に逃げることは不可能ではありません。Amazonの技術を使った店舗で一切の買い物をしなければ良いのです。しかし、Amazon Goが十分に普及してしまった世の中で、果たしてそれが出来るでしょうか?

少なくとも、現在iPhoneを使っている人は同様に逃げられないでしょう。iPhoneを使っているあなたも、どこで何をしたのか、iPhoneを使ったあらゆる行動をAppleに監視されているのです。もちろん、Appleがそれを悪用することは無いと私は信じていますし、それ以前にiPhoneの利用は実に便利なことばかりです。逆の言い方をすれば、それが受け入れられるのであれば、Amazonによる購買行動の監視も受け入れてよいのではと思うのです。

次のエントリでは、レジ無し店舗の普及によって職を奪われるかもしれない、ショップ店員と言う仕事の将来について考察してみたいと思います。