・衝撃のニュース
子供の受験のこともあって、我が家では日常的にテレビを見る習慣がありません。従ってテレビのニュース番組もほとんど見ることがないのですが、その代替の情報取得手段に英語の勉強も兼ねて、CNNのニュース動画をPodcastを使って通勤電車の中で観ています。こちらの「CNN10」と言う番組なのですが、まず英語の教材として素晴らしいうえに(それについて語りたいことは山ほどあるのですが、それは別途エントリにまとめることにしましょう)、日本のメディアが大きく取り上げない世界の早耳情報を仕入れる貴重な情報源にもなります。

そんなCNN10で、個人的に大きな衝撃を受けたニュースが1月23日に放映されました。そのニュースの紹介が、今回のエントリの主題です。
レジ無し小売店舗Amazon Goについてです。

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・"Amazon Go" の革新性(国産無人レジとの違い)
"Amazon Go"が、どのようなものなのかは、まずはこちらのAmazonが作った公式動画を見るのが良いでしょう。解説は英語ですが、映像を見るだけでも十分に理解いただけるはずです。


実は「無人レジ」と言う観点では、特に目新しいニュースではありません。1年以上前に、ローソンとパナソニックが無人レジの実証事件を公開していますし、似たような取り組みは様々な企業で行われています。


これらの日本製無人レジが時期的には先行していることを踏まえたとしても、Amazon Goの登場は衝撃的です。ローソン&パナソニックで使われている技術とはまるで違います。一言で言うと・・・

Amazon Goのほうが、量産化された場合のコストが圧倒的に低くなるはず!
と言うことと、
さらには・・・
Amazon Goにのみ、利用者側にも大きな利点(レジ待ち不要)がある
と言う点で、両者はまるで違うモノなのです。

結論から先に申し上げると、Amazon Go はこの先ほんの数年で世界中に普及していき、小売業とそのビジネスモデルを根底から変えてしまうものになるのではと考えるのです。そう考える理由を下記で述べます。

・量産コストの低さ
結論を急いでしまいましたが、その理由を説明するために、まずはAmazon Goでの買い物の流れをまとめます。
  1. 利用者は、事前にスマートフォンにAmazon Go専用アプリをインストールしておく。買い物後の決済もそのアプリを通して行われる。
  2. 店舗の入口にはゲートがあり、スマートフォンアプリで表示されたQRコードをゲートに読み取らせることで入場できる。
  3. 店舗に入れば、店舗内の商品を自由に取ってそのまま持ち帰ってよい。誰が何を購入したかは、店舗内のカメラが撮影した画像から完全に自動認識される。
  4. レジのようなものはなく、客は店舗での清算手続きは一切不要。商品を取った後は列に並ぶ必要は全くない。
以上簡単にまとめましたが、さらに詳しくしりたい場合は、こちらのサイトが最も分かりやすくかつ詳細に解説されていますので、ご覧になってみてください。

純粋に技術的な高度さと言う観点で、カメラの映像だけで誰が何を購入したかを正確に判断出来ると言うことも驚くべきことです。この技術の開発には相当なコストがかかっていることでしょう。一方で、この技術の最大のポイントは、「量産時のコストが極めて低くなりそうだ」と言うことにあると感じました。カメラ映像による自動認識は、基本的にはソフトウェアで行っているはずですが、ソフトウェアは、最初に作る場合のコストは大きくとも、一度出来上がれば、それを複製していくコストはほとんどかかりません。ソフトウェア以外に必要な、QRコードによる入場ゲートや天井に備え付けられたカメラは特別なものである必要はないはずで、汎用品が利用できますから、それほどコストが嵩むものではありません。

一方、ローソン&パナソニックの無人レジは、レジが無人になったとは言ってもレジそのものは残っています。そのレジはかなり特殊な造りのハードウェアですから、生産するためにそれなりのコストが必要になるでしょう。また、ローソンの仕組みは、買い物かごもバーコードを読み取る特殊なものですので、それにも特殊なハードウェアコストがかかってしまいます。

ローソン&パナソニックの方式は商品のバーコードを読み取らせる方式ですが、この他にも商品のひとつひとつに「ICタグ」を貼っておくことで自動精算を行う仕組みも考えられているようです。この方式もICタグそのもののコストが問題になっている他、商品にICタグを貼るための人件費も無視できません。いずれにせよ、無人レジ店舗を新たに作るためのコストは、既存の店舗に比べると大幅に高いものになってしまいます。

これら国産の仕組みに比べると、Amazon Goは画像認識ソフトウェアの初期開発コストは莫大でも、店舗を新たに作るためのコストは圧倒的に低く済むと言えるのではないでしょうか。これが急速に普及するであろうことを予測する第一の理由です。


・客の立場でも大いに魅力
理由はコストだけではありません。顧客視点でも、Amazon Goのほうが魅力が大きいのです。この種の「新しいモノ」が登場した場合、最初は物珍しさが先行します。その点では、Amazon Goも国産無人レジも大きく変わらないでしょう。しかし、仮に両者が十分に普及して珍しくない存在になった場合に、客の立場でどちらの店舗での買い物を選ぶでしょうか?

私なら、Amazon Goを選びます。なぜなら、「レジの待ちが一切ない」と言うのは大きな魅力だからです。国産無人レジの場合、通常の有人レジよりは効率的とは言え、やはり清算のための手続きは発生します。混雑した場合に、これに行列が出来てしまうこともありそうです。ところが、Amazon Goの場合は、棚から商品を取ってそのまま持ち帰る以外の一切の手続きが発生しないのです。僅かな時間の違いかもしれませんが、この僅かな違いこそ、「どちらの店舗を選ぶか?」で大きな違いになるように思います。


先に述べたように、これら2つの理由で、国産無人レジとAmazon Goは「全く別物」と言ってよいほど、今後の普及に大きな差が出来ると考えるのです。では、Amazon Goが爆発的に普及した世の中は、いったいどのようなものになるのでしょう?次回のエントリで考察してみたいと思います。

今回はこのあたりで。