6日前のエントリに書いたように、「新しいiPad」を発表後にいち早く発注した。下記の通り、既に発送されたらしいので、何事もなければ明日3月16日(金)に我が家に届けられるはず!
AppleStore
 
偶然その日は、長女の幼稚園卒園式のために有給休暇取得予定なので、かなり早い時間に触ることが出来そう。本当に楽しみだ。

ここからが今日の本題だが、
私の期待はさておきこの新しいiPad、「期待はずれ」との声も多く聞かれる。

まずは天下の朝日新聞が、「新iPad 肩すかし」との見出しで報じた。(こちらのサイトで、そのイメージがご覧になれる)

ネットでは、下記2つのBlogが「期待はずれ派」の急先鋒だろうか。

確かに今回の発表では、驚くような新技術も新機能もなく、何らかの「サプライズ」を期待していた人たちから見ると、肩すかし感は否定できない。私も、発表直後は正直言ってがっかりした。

ところが、「ハイテクオタク」的な発想を離れて、純粋にビジネスの観点で見てみると、Appleのなかなかにしたたかな戦略が見えてくる。その際にベースとなる考え方は、当Blogで何度か取り上げた「キャズム」理論と、「イノベーションのジレンマ」理論の、両巨頭とも言える2つのビジネス理論だ。

■まずはキャズム理論による説明から
キャズム理論によると、画期的なテクノロジを用いた新しいタイプの製品の場合、それを購入しようとする顧客の層は、下図のように分類される。
chasm
1) ハイテクオタクが真っ先に購入し、進歩派がそれに続く。

2) さらにその後に実利主義者や保守主義者が購入するようになると、
  製品の販売は大きく伸びる。

3) ところが進歩派の購入動機と実利主義者の購入動機には
  大きな隔たり(キャズム)がある。
  進歩派に対して成功したマーケティング戦略は、実利主義者には通用しない。

4) ハイテク製品で商業的な成功をおさめるためには、
  この隔たり(キャズム)を意識して、
  実利主義者に訴えるマーケティングを行わなければいけない。

この理論に従い、「Appleは、いよいよ本腰を入れてキャズムを乗り越え、実利主義者層や保守主義者層にiPadを売ろうとしている。」と考えると、Appleのやっていることは極めて理にかなったものに見えてくる。

ではその実利主義者や保守主義者は、自分たちがお金を払って購入する製品に対して、具体的に何を望むだろうか?

驚くような新機能・新技術だろうか?
答えは「No」。
それを望むのは、ハイテクオタクと進歩派だ。新しいiPadに対してサプライズ技術が無かったと失望しているのは、これら新しいもの好きの層であり、Appleは「それらの層には既に十分にiPadは浸透した」と判断したのだろう。


値段の安さだろうか?
まさに「Yes」。
今回のAppleの発表の中で、見逃しがちであるが実は非常に重要なポイントとして、「値下げされて併売される iPad 2」があると考えている。昨年12月の「AndroidタブレットがiPadにどうしても勝てない3つの理由」と言うエントリの中で、「Appleは、iPadの販売価格を下げようと思えば、いつでも下げることができる」と書いた。とは言っても、ただ闇雲に値段を下げるだけでは、Android陣営との消耗戦になり、さらにはブランド価値も落としてしまう。
「新しいiPad」でブランド価値を維持しながら、「旧型iPad(iPad 2)」で価格重視の実利主義者を取り込んでいくと言うのは、非常にうまいやり方だと思う。新型と旧型で、多くの部品を共通化しているのも、コスト競争の点では有利だ。


何年も同じものを使い続けたいか?
これも「Yes」。
「新製品が出るたびに買い換える」のは、ハイテクオタクや進歩派に特有の行動。実利主義者は決してそのようなことはせず、製品が完全に陳腐化するまで同じものを使い続ける。その期間は、長ければ長いほどよい。
製品がモデルチェンジの度に大きく変わのは、旧型機種の陳腐化を促進してしまう。今回の新しいiPadの機能・性能の向上はいたってマイルドだが、それは「Apple製品は、そこそこ長く使い続けられますよ」と言う、実利主義者や保守主義者に向けたメッセージとも受け取れる。



■次にイノベーションのジレンマ理論による説明を
「本当に旧来のテクノロジを破壊し新たな市場を作る技術と言うものは、旧来のテクノロジとは不連続な革新を伴う」と言うのが、「イノベーションのジレンマ」の触りの部分。
innovation

iPad は、パソコンに対する破壊的技術になるだろうし、iPod は、旧来のポータブルオーディオプレーヤーを破壊した。時代を遡れば、パソコンAppleII は、汎用コンピュータを破壊した。

「iPad」と言う枠組みの中で、いくら凄いハードウェア的な新技術が実装されたとしても、それは持続的な進歩でしかなく、「破壊的テクノロジ(=不連続な革新)」にはなりえない。

上で、「Appleは実利主義者層に狙いを移した」と書いたが、別にハイテクオタク層や進歩派層を見放したわけではないと思う。たまたま今回のiPadの発表ではフィットしなかっただけだ。スティーブ・ジョブズのDNAがApple社内に生きていれば、誰も予想に出来ない「破壊的テクノロジ」の製品を、また出してくれると思う。それに期待しよう。

ちなみに、スティーブ・ジョブズ亡き後に行われたAppleの発表の中では、「教科書の再発明」こそ最も「破壊的技術」になりうるものだと思う。これに破壊されるであろう旧来技術は、グーテンベルク以来の歴史を誇る「紙の本」だ。



・・・などと言った屁理屈は抜きにしても、明日の「新しいiPad」の到着が待ち遠しい。