まずは読者の皆さんに算数の問題。
とてもお腹がすいていて、少しでも多く何かを食べたいとき、下記のA) と B) のどちらを選ぶべきでしょう?
独占と競合

算数問題の正解は B)。

円の面積は「半径×半径×円周率」で求められるので、計算するとB)のほうが少しばかり大きくなる。
A) (20/2)×(20/2)×円周率=約157 平方cm
B) {(30/2)×(30/2)×円周率}÷2=約176.6 平方cm

数学的センスのある人ならば、電卓を使ってここまで計算しなくても、「面積は、長さの二乗に比例する」ことですぐにB) のほうが大きいことを感じ取れるだろう。一方で、直感を信じてA) のピザを選ぶ人も少なからずいるのではないか。

別に算数の話をしたいわけでなく、いわゆる「ハイテク製品」のマーケティングが、今日のエントリの主題。マーケティングの世界でも、「円形ピザパイ1枚独占が究極目標」として、「シェアの取り合い」に血眼になることは多い。一方で、強力な競合とパイを分け合うことになったとしても、「ピザパイの直径自体を大きくすべき」と考えて、うまく競合を活用して市場全体を大きくすることに活路を見出すこともある。市場が既に成熟してしまった製品(例えば自動車)では、前者の「パイの奪い合い」にならざるをえないが、(例えばかつてのスマートフォンや、現在のタブレット端末のように)市場自体がこれから大きくなりうる市場では、一社独占の状態よりも競合がいたほうが市場の拡大は促進される。

当Blogでは、3ヶ月以上前に「類似競合製品は無いと困る!」と言うエントリを書いたが、これはまさに競合によって市場自体を大きくする考え方の紹介だった。競合の存在によって、なぜ市場が大きくなるかと言う理由が説明してあるし、実例のひとつとして、AppleのiPhone の売上げが、競合であるはずのAndroidの登場によって、競合の無い独占状態のときよりもむしろ大きく伸びたことを示した。興味のあるかたは、是非上記リンクをクリックして過去エントリも見ていただきたい。


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で、実はここからが本題なのだが、「シンクライアント」あるいは「デスクトップ仮想化」と呼ばれるような分野も、現時点では市場自体がまだまだ小さくて、これから市場を大きくしていかなければならない分野と言える。

かつてCitrixは、画面転送を使った「シンクライアント」あるいは「デスクトップ仮想化」の市場で、ほぼ一社独占の状況にいた。そんな中、2006年頃によく似た画面転送技術を使って、競合として新たに市場に参入してきたのがVMwareさん(敬意を込めて「さん」づけします)だった。このことをきっかけに、「シンクライアント」あるいは「デスクトップ仮想化」の市場が活性化し、市場規模自体も大きくなったことは間違いない。お客様からの引き合いも、メディアに取り上げられることも多くなったと実感している。さらには、少なくともCitrixの売上げは、VMwareさんのデスクトップ仮想化市場参入以来伸び続けているのだ。

ただし、デスクトップ仮想化の市場全体が活性化してきたとは言っても、「普通のパソコン」に比べれば2012年現在のデスクトップ仮想化市場は、まだまだ小さい。デスクトップ仮想化市場をさらに大きくするためには、Citrix側の製品・サービスの改善はもちろん、「複数製品の適切な競争」によって市場自体を盛り上げる必要があると強く考えている。

そんな興味もあって、VMwareさんの最新デスクトップ仮想化製品「VMware View 5.0」を実際に動かしてみて、強力な競合になりうるかどうかを検証し、その結果の動画をYouTubeにアップした。まずはご覧になっていただきたい。




 
最終的な評価は、実際に製品を購入するお客様や、そのお客様への提案とシステムのインテグレーションを行う販売パートナー様に委ねたい。

この検証内容の詳細については、次回のエントリで紹介する。