前回のエントリでは、Citrix Receiverのような「Windows環境をiPad上で動作させる」仕組みだと、「タブレット特有のタッチ操作に特化したGUIが一般的には使えない」ことを説明した上で、最後に「タッチ操作に最適化するようなGUIの改善の方法もある」ことを動画で示した。(下のイメージをクリックすると、YouTubeの動画ページにジャンプ)
YouTubeでのXenApp Moblity Pack
その方法とは、「XenApp 6.5 Mobility Pack」と名づけられたCitrix XenApp 6.5の追加モジュールを導入することなのだが、ちょうど前回のエントリと相前後して Citrixから公式発表でも「XenApp 6.5 Mobility Pack」 が紹介されている。こちら(ITMedia)こちら(ZDNet)のページなどでも、Citrixの2012年の事業戦略の一環として紹介されている。

今回のエントリでは、この「XneApp 6.5 Mobility Pack」について、もう少し詳しく見てみたい。

■何ができるか?
まずはWindowsのデスクトップ環境の見た目が変わり、スタートメニューなどがタッチ操作に適したメニューに変更される。

下図が、Citrix Receiver for iOS を使って、iPad上に普通にWindowsの仮想デスクトップを表示させたときのイメージ。
Citrix ReceiverによるiPad上のWindows
画面上部中央の黒い逆台形(Citrix Receiverの機能を設定するためのボタン)が、仮想デスクトップであることを示しているが、その他は通常のWindows画面と変わらない。しかしこれをそのままiPadで使うと、スタートメニューの深い階層にあるアプリケーションを起動する際にメニューの幅が狭くなり、タッチ操作に若干不便を感じる。

「XenApp Mobility Pack」を適用した、仮想デスクトップ環境では、Windowsが下図のように変更される。
XenApp Mobility Pack適用後
スタートメニューが改変されていることが、すぐにお分かりいただけると思う。このスタートメニューは、メニューの深い階層に行ってもメニュー間の幅が狭くならずに一定を幅を持つように出来ており、よりタッチ操作に適したスタートメニューとなっている。


次に、元々はマウス操作に最適化されたWindowsアプリケーションのプルダウンメニューが、タッチ操作に最適化されたプルダウンで操作できるようになる。

下図が、典型的なWindowsアプリケーションのプルダウンメニューの例。(実際のWebページは、こちらで見ることが出来る)  
通常のWindowsプルダウンメニュー
このままiPad上で操作すると、各メニュー項目間の幅が狭すぎて、タッチ操作だと意図しない隣のメニューを選んでしまうことがよくある。

「XenApp 6.5 Mobility Pack」を適用して、iPadデバイスからWindows仮想環境を使うと、下図のようになる。
XenApp Mobility Packで改変されたプルダウンメニュー
元々のWindowsのプルダウン(左側)にオーバーレイ(上から重ねて表示すること)する形で、別のプルダウンメニュー(右側)が表示されるようになる。左側のオリジナルのメニューと比べれば分かるように、オーバレイされたメニューは、項目間に十分な幅があり、間違わずに素早くタッチ操作ができるようになっている。

さらには、アプリケーションのテキスト入力フィールドや、メモ帳やMS Wordなどのテキスト入力アプリケーションなどを起動した場合は、iPadのソフトウェアキーボードが自動的にポップアップするようになる。
自動的に出てくるキーボード
「XenApp 6.5 Mobility Pack」を使わない場合、iPad上で表示される仮想Windows環境は、単に画面を写しているだけであり、テキスト入力状態か否かを判別できないために、自動キーボードポップアップが出来ずにいた。「XenApp 6.5 Mobility Pack」を適用することではじめて、この自動キーボードポップアップ機能が、仮想Windows環境でも使えるようになる。


■Mobility Packを使うために何が必要か?
まずはCitirix XenApp 6.5 を用意していただく必要がある。XenApp 6.5は、2012年2月時点でのXenApp最新バージョンである。残念ながら、それ以前のバージョンのXenApp では、Mobility Packの利用は出来ない。

XenApp 6.5が稼動可能な状態に出来たら、いよいよ次は「XenApp 6.5 Mobility Pack」をインストールする。Citrix XenApp 6.5 のライセンスをお持ちのお客様であれば、「MyCitrix」サイトから無償でダウンロード可能だ。なお、XenApp 6.5 を利用可能なCitrix ライセンスをお持ちのお客様であれば、Mobility Pack のための追加料金は一切必要ない。

また、「ライセンス購入前に動きを確認してみたい。」と言う場合は、Citrixの販売パートナー様にお問い合わせいただきたい。Citrixでは、90日間無償で製品を評価可能な「評価版」を提供しているが、2012年2月現在では、販売パートナー様を経由しての提供のみ行っている。

Mobility Packをインストールすると、XenAppのポリシー設定に、下記のような項目が追加される。
XenApp Policy
右下に表示されるHelpの説明を参照しながら必要な設定をすれば、iOSまたはAndroidでアイスからの接続時にのみ、これらの設定が有効になる。

Mobility Packのインストール方法、インストール後の設定方法に関する詳細は、こちらの CitrixeDocs (オンラインマニュアル)を参照いただきたい。残念ながら、2012年2月時点では、英語の記述しかないが、手順自体はそれほど難しいものではない。

Mobility Packのインストール、および必要な設定さえ行えば、あとはiPhone/iPad/Androidのような、モバイルデバイスからXenApp 6.5に接続するだけで、動画でご覧いただいたような操作が実現できる。なお、通常のPCからの接続の場合は、Mobility Packの機能は使えない。


■まとめ
以前から書いていることの繰り返しになるが、iPadは使い勝手やコストの面で素晴らしいデバイスであり、このデバイスを企業内での特定業務利用に使いたい要求は必ずあると思う。ところが、「その上で動かすアプリケーションをどうするか?」と言うことが、担当者の悩みのタネとなる。iPadネイティブアプリ開発は、そのひとつの解決策ではあるが、課題もあることはこちらのエントリで述べた。

私からの提案は、Citrix Receiverを使って、既存のWindowsアプリをiPadに転用したり、もしくは新規開発するにしてもWindowsベースで作ってiPadに転用すること。パフォーマンスは十分なものが得られることはこちらの動画で示したし、転用アプリのGUIの面でもネイティブアプリに遜色ないことが、今回のエントリで分かっていただけたのではないかと思う。