<2012年4月8日追記>
実は当ブログは、過去に2度の「ブログ名変更」をしている。つまり、現在の「Living in the Flat World」と言うBlogタイトルは、”三代目”のブログ名称になる。

下記のエントリは、1回目のブログ名変更をしたときのもの。二代目のブログ名称は、「Lecture notes in Psychohistory」と言う難解で長ったらしいものだったが、個人の思い入れはそれなりに強いものだった。その思い入れについて語っているこのエントリは、今となってはマヌケな内容になってしまっているが、あえて記録として残しておこうと思う。

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ちょっとした大人の事情があって、本日からブログのタイトルを変更した。
新Blogタイトルは「Lecture notes in Psychohistory」!
ほとんどの人には意味不明のタイトルだと思うので(ある意味それを狙っている)、今日のエントリでは、このBlogタイトルの意味を説明しておきたい。

「Lecture notes in Psychohistory」は、日本語で書くと「心理歴史学の講義ノート」になる。
「心理歴史学」と言うのは、あるSF小説に出てくる架空の学問分野のことで、詳細は後述するが、数学的な計算によって「未来予測」をある程度の正確性をもってできるようにするものだ。

傲岸不遜も甚だしいことではあるが、このBlogでも心理歴史学のように何らかの未来予測ができれば良いな、との思いを込めたかったのが一つの理由。そして何より、この架空の学問が登場するSF小説「ファウンデーション」の一連のシリーズと、その作者であるアイザック・アシモフが大好きなので、それにあやかったタイトルを付けたかったのだ。

架空の学問「心理歴史学(Psychohistory)」が登場するのは、こちらの「ファウンデーション」と言う小説の中。
ファウンデーション
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【小説のあらすじ】
天才数学者のハリ・セルダンは、「個々の人間の行動を予測することは難しくても、十分な数の集団の行動であれば、かなりの正確性で予測できる」とする「心理歴史学」を確立した。その心理歴史学の計算によれば、現在隆盛を誇る銀河帝国は近いうちに崩壊し、それを止める手立てはもはや無い。崩壊の後には暗黒の時代となってしまうが、このまま何もしなければ3万年続く暗黒時代を、30分の1の期間の千年に短縮することなら、心理歴史学を駆使すればまだ可能だ。
その方法とは、帝国の中心から遠く離れた最辺境の惑星に科学者を集めて、「銀河大百科事典」を編纂するための財団(ファウンデーション)を設立することだった(!?)。当のファウンデーションは、隠された真のミッションを知ることもなく、百科事典を完成させるために、近隣の惑星や帝国本体との戦争の危機を何とか切り抜けていく。そして思わぬ成長を遂げていくことになる。


【山田の書評】
この小説は私の最も愛する小説で、何度も何度も読み返したが一向に飽きなくて、読むたびに新鮮な驚きを与えてくれる。上で説明した「心理歴史学」は、出版された1942年時点では単なる空想上の学問でしかなかったが、その「十分な数の集団であれば予測が立てられる」と言うコンセプトは、現代の様々な学問で使われていると言える。
「心理歴史学」を創作した、作者のアイザック・アシモフの未来予測能力には感服するばかりだが、この小説の最大の驚きは「巨大組織崩壊の被害を最小限にするために、遠く離れた所に新しい組織を作る」と言う戦略だろう。実はこれと同じ戦略が、1997年に出版された有名ビジネス書にも書かれている。
イノベーションのジレンマ
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この「イノベーションのジレンマ」では、現時点で素晴らしい技術を持った巨大企業も、「破壊的テクノロジー」の登場によって衰退・崩壊してしまうことが避けられれないことを示している。そしてその崩壊は、どんなに良い経営判断でも避けられないと言うのだ。(ケーススタディとして、かつてミニコンの世界で隆盛を誇っていたDEC(Digital Equipment)が、「パソコン」と言う破壊的テクノロジーの登場によって衰退・崩壊した実話を挙げている)
既存の巨大企業が破壊的テクノロジーに対処するための唯一の手段として、作者クレイトン・クリステンセンが紹介しているのが、実は50年以上前にアシモフが提唱したことと同じ「地理的に遠く離れた場所に新組織を作る」ことなのだ!

【閑話休題】
ホンダの二足歩行ロボットASIMOの名称は、公式には「Advanced Step in Innovative Mobility」の略だとされている。しかし、アイザック・アシモフの別の小説内で提唱された「ロボット工学三原則」へのオマージュとして、「ロボットASIMO」は「偉大な小説家アシモフ」を意識してつけられた名前であることは明らかだろう。
ロボットASIMO
  二足歩行ロボットAsimo

【ロボット工学三原則】
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。


アシモフよ永遠なれ!
アイザック・アシモフ