一昨日昨日のエントリで、Androidタブレットをこき下ろすような書き方をしてしまったが、別に私はAppleが大好きなわけでも、Androidが嫌いなわけでもない。少なくとも今年(2011年)の春ぐらいまでは、Androidタブレットに大いに期待していたし、タブレット端末でのAppleの独占を、むしろ苦々しいくらいに思っていた。

そのためかAndroidタブレットに実際に触ってみたときの「がっかり感」は、より一層強いものになってしまったかもしれない。Androidタブレットに期待を裏切られた思いを胸に、ついに観念してiPadを購入したのは、2011年の5月末のこと。新しいもの好きの多いCitrixの同僚達は、2010年のiPadの売り上げ増に相当貢献していたが、そんな中での私のiPad購入は最も遅い部類だった。

Androidタブレットをユーザの立場で実際に触ってみての「がっかり感」もさることながら、マーケティング的な観点で見ても、Android陣営がやっていることはどこか間違っていると思えて仕方が無い。昨日のエントリで書いた「AndroidタブレットがiPadにどうしても勝てない3つの理由」以外にも、AndroidがiPadに勝てない理由を挙げることはできるのだが、そんな中で今日はあえて、Android陣営の立場に立って市場を奪回する起死回生策を考えてみたい。


■起死回生策その1 ~タブレットのマスマーケットを当面諦める~
Androidタブレット陣営が現在やっていることで、「最も間違っている」と思えるのが、「マスマーケット」でiPadと正面勝負を挑もうとしていることだ。

ここで言う「マスマーケット」とは、汎用的な「何でも出来ます」的な端末ととして購入してくれるユーザ層を表している。その具体例は、企業での利用もあれば、新しいもの好きの若者もいれば、お年寄りもいれば、小中学生もいれば、主婦層もいる。iPadの凄い所は、この種のマスマーケットを既に支配し始めていて、特にお年寄りや小中学生など、これまでパソコンさえも使っていなかった層の獲得にさえ成功しかけているところにある。

このようなマスマーケットの場合、既に市場を独占しかけている者(この場合はiPad。かつてはWindowsもそうだった)に、正面きって戦いを挑んでもほぼ勝ち目はない。独占している者には好循環(売れる→3rd Party製品の充実→さらに売れる→さらに3rd Party製品が充実・・・)が続き、少数派には悪循環(売れない→3rd Party製品の欠乏→売れない・・・)のみが待っている。挽回するためには(まさにWindowsに対してiPadがやったように)「全く別の市場」を作り、そこをターゲットにしないとダメなのだ。

では、マスマーケットでの正面衝突を避けるとしたらどうするか? 「ニッチ市場」しかない。この場合の「ニッチ市場」とは、例えば「小学校で使われる、小学生のためのIT入門端末」だとか、「宅配業者向けに特化した端末」のようなものだ。これらはあくまでの「例」でしかないが、もしもそこに導入されるとなると、これらだけでも非常に大きな市場であるし、これらの用途で採用されるか否かは、(良い意味でも悪い意味でも)通常の市場原則以外の力関係で決まることが多い。十分に逆転の可能性ありなのである。

学校 

■起死回生策その2 ~当面は携帯電話に注力する~
これまで特に明記してこなかったが、私の一連の「AndroidタブレットはiPadには勝てない」と言う説の対象には、携帯電話&スマートフォンは含まれていない。携帯電話&スマートフォンの世界なら、タブレット端末に比べるとAndroidがiPhoneを凌駕出来る可能性はぐんと高まる。

なぜなら、タブレット端末が「多数のユーザ&多数の3rd Partyベンダの意向」と言う「市場原理」に基づいた力学で動くことに対し、携帯電話の場合は「少数の巨大通信キャリア(携帯電話会社)の意向」と言う、市場原理にあまり関係しない力学で動くことが大いにあるからだ。全ての通信キャリアがAppleにソッポを向けば(まずありえないことではあるが)、いとも簡単にiPhoneは売れなくなってしまう。

実際は通信キャリアがAppleにソッポを向くことはほぼありえないだろう。ではAndroid陣営はどうすればよいか? 私が考えるに、今狙うべきは「スマートフォンを必要としない人々」だと思う。

タブレット端末の場合も、「タブレット端末なんて必要ない。使わない」と言う人々は相当数いる。この人たちは、どんなにタブレットが安く使いやすくなっても使わない人たちだが、その人たちが取る選択肢は、単純に「何も買わない」と言うものだ。そこに市場は存在しない。

同様に「スマートフォンなんて絶対いらない」と言う層は確実に存在する。しかしそのような人々のかなりの割合が「でも携帯電話は必要」であるはずだ。さらには「スマートフォンに興味はあるが、パケット定額が高すぎてスマートフォンに手が出せない。」と言う人々も相当数いる。

つまりは、既存のスマートフォンではカバーできない市場、しかもかなり巨大な市場が確実に存在しているのである。例えば日本の場合、この「スマートフォンいらないけど、携帯電話はいる」と言う人々の市場は、現状ではいわゆる「ガラパゴス携帯」に占領されている。これはAndroid陣営にとってはiPhoneよりも遥かに戦いやすい相手なのではないだろうか。

具体的には、ガラパゴス携帯とスマートフォンの中間的な存在のものを作ればよい。「中身はAndroidだが、インタフェースなどは実質ガラパゴス携帯」のようなものだ。特にスマートフォンで実質的に必要となる「パケット定額」の契約が無くても良いように、データ通信機能を無効にすることは重要だ。これだけで「パケット定額払いたくない」人々が飛びついてくれる。

このような形で「スマートフォンいらない」層に対し、実際に使わせながらスマートフォンへの抵抗を減らし、徐々に徐々に「いや実はスマートフォンも悪くないな」と思わせていけば、それだけでiPhoneが浸透していない市場をおさえることができる。このように特定の市場をおさえてしまえば、あとは待っているのは好循環だけだ。
携帯電話 
携帯電話の市場をおさえた後で、そのユーザを囲い込みながらタブレットに移行させていけばよい。

またまた長くなってしまったので、今日はここまで。
まだまだAndroidの起死回生策はある。


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2012年1月28日追記

その後Appleは、「学校教科書の電子化」と言う市場に、万全のビジネスモデルを用意した上で進出し、さらにAndroid陣営がAppleに追いつくことを困難にしてしまった。
それに対する山田の見解は、下記のエントリにて。