まさに「雨後のタケノコ」状態のスティーブ・ジョブズ関連書籍だが、
中でもこれが一番のおススメ。素晴らしい!!
CEOスティーブ・ジョブズ追悼号
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Appleとジョブズの軌跡が必要かつ十分な量でまとめられているほか、懐かしいApple製品の写真が豊富に掲載されているのも嬉しい。歴代の基調講演の解説にも多くのページが割かれており、世界に衝撃を与えた数々の製品だけでなく、徐々に痩せていくジョブズの外見の変遷が一望でき、懐かしくもあり、そして最後の姿はいかにも痛々しい。


ちなみに、スティーブ・ジョブズ関連本では、こちらがベストセラーになっているらしい。
ジョブズ本
2冊合わせて4,000円近くが払えるほどジョブズが好きでもないし、ひたすら文字だけで900ページ近い分量を読む時間を捻出できるほどApple好きでもないが、やはりAppleやジョブズは強い興味の対象であると言う、私のような人は多いと思う。このハードカバー本を買おうかどうか迷っている人は、最初に紹介したムック本がちょうど良いはず。



冒頭で紹介した「CEOスティーブ・ジョブズ追悼号」に話を戻そう。
この本で特に素晴らしいと言えるのが、大谷和利と言うライターの書いたAppleの歴史、および時々のビジネス上のポイントを書いた記事(40ページ近い分量)。ジョブズ、そしてAppleの成功の要因が独自の分析で解説されているのが良い。

中でも特に印象に残ったのが、(今となっては当たり前ではあるが)「iTunes」のWindows版のリリースを決断した理由の部分。確かに当初iTunesは、Macintosh専用のソフトウェアでWindows版はリリースされていなかった。その頃まだまだMacintoshが収益の柱だったApple社内でも、iTunesのWindows版開発は「敵の軍門に下ること」として反対意見が多かったらしい。

今になって振り返れば、このWindows版iTunesのリリースこそ、iPodがブレイクするきっかけであったし、それはその後のiPhoneやiPadでの市場優位に直結している。また、iTunesやiPodで「Apples製品の良さ」を知ったWindowsユーザが、Macintoshに乗換えした例も多かったはずだ。

ただしこのiTunes Windows版リリースを「当然の決断」と言うのは、あくまで「後だしジャンケン」での話かもしれない。ところが私自身も経験しているが、IT業界の中では競合相手に必要以上にナーバスになることが多く、長期的な戦略やりも目先のパイの分け前に必死になりすぎる傾向が強い。そんな彼らから見ると、競合はあくまで倒す相手であり、「うまく競合を利用する」と言う選択肢は全く無いようだ。部分的にしろ、競合と思われる相手と組むことは、「敵に塩を送る」だの「敵の軍門に下る」だのと忌み嫌われてしまうのだ。きっと当時のAppleにも反対派はいたことだろう。

私は以前に、こちらのエントリ(競合製品は無いと困る!)で、競合の必要性を説いた。また、かつてNECさんとのこんな話(Citrix XenDesktop による NEC VirtualPCCenterの連携強化)にも絡んでいたが、ともすると当時はCitrixの競合と思われていたNEC VirtualPCCenterとの連携を「敵に塩を送る」として、非難されたりもした。iTunesのWindows対応の事例は、その時の判断が間違っていなかったとして、勇気づけてくれるものとなった。